2025年の法改正にも対応!テント倉庫を活用した熱中症リスク対策
2025.04.20
2025.7.16

最近の夏はとても暑くなってきているため、現場作業中の熱中症も増加傾向にあります。
厚労省の最新データを見ると、2024年には職場での熱中症で1,195人もの人が被害を受け、そのうち30人が亡くなっています。
2023年も1,106人(前年より34%も増加)と、熱中症の被害は増える傾向にあります。特に建設業(28.7%)と製造業(26.4%)での発生が目立っています。
従業員が熱中症になると、生産性の低下だけでなく、休業による工期の遅れ、最悪の場合は命に関わる重大リスクが発生します。
そのような重大な事故を防ぐために、ぜひテント倉庫の暑さ対策についてはよく考えていかなければなりません。
この記事では、テント倉庫を活用した効果的な熱中症対策についてお伝えします。
目次
テント倉庫がもたらす驚きの冷却効果
「テント」と聞くと「夏は暑そう…」というイメージを持ちませんか?でも、最新のテント倉庫はそんな常識を覆す高機能な素材を使った熱中症対策設備を備えています。
日本テントシート工業組合連合会が調査したところ、高性能な遮熱素材を使ったテント倉庫の中は、普通の建物より最大8℃も涼しくなることが分かりました。

この素材は特殊な多層構造になっているため、太陽の光をよく反射し、たまった熱を外に逃がすことで中の温度を下げる働きがあります。このメカニズムにより、エアコンなしでも外気温より5〜8℃低い環境を実現できます。
テント倉庫のメリット・デメリット
テント倉庫を導入する際には、いいところも気をつけるべき点も両方知っておくことが大切ですね。設備投資を検討するなら、こういった特徴をバランスよく考えることが大切です。以下に、メリットとデメリットをまとめてみました。
メリット:
- 初期コストが安い(プレハブの約半額)
- 工期が短い(1~1.5カ月で設置可能)
- 風通しがよい
- 昼間は照明が不要なほど明るい
- 必要に応じて移動・設置場所の変更ができる
デメリット:
- 寿命が短め(7~10年、プレハブは15~20年)
- 強風に弱いため特別な固定が必要
- 断熱性は単層だと低い
- 音が漏れやすい
2025年建築基準法改正とテント倉庫の関係

2025年4月から建築基準法が変わりますが、これがテント倉庫の設置や使い方に大きく影響してきます。主な変更点は3つあります:
- 省エネ基準への対応が義務: 本設として申請する場合は対応が必要になります。ただし、仮設建築物には一定の緩和措置が継続される見込みです。
- 仮設建築物の許可基準の明確化: 仮設建築物に関するルールが明確に安全性に関する基準がより具体的になり、とくに風に対する強度(風圧力)の構造計算が厳しくなります。
- 既存テント倉庫の使用ルールが一部緩和: 既に設置されているテント倉庫の継続使用については、一部基準が緩和される方向です。
2025年の法律が変わった後も、テント倉庫は仮の建物として特別に扱われますが、申し込み時の安全チェックが厳しくなります。
たとえば、台風のような強い風にも壊れない建物だと証明する書類が必要になることが増えるでしょう。
建築基準法第85条の活用
テント倉庫は「仮設建築物」として建築基準法第85条という条文に基づいて、いろいろな緩和措置が受けられる可能性があります。
仮設建築物として認めてもらうための主な条件は以下の通りです:
- 目的の一時性:常設ではなく一時的な使用目的である
- 期間の制限:原則1年以内(当初は最長2年まで、延長可の場合あり)
- 構造の安全性:風雨や地震に対する安全性確保
- 防火・衛生面の配慮:消防法や衛生上の基準を満たす
自治体によって運用は異なりますが、熱中症対策を目的とする場合、比較的スムーズに許可が下りるケースが増えています。
ただし、申請から許可まで1~2ヶ月かかることもあるため、余裕を持った計画を立てるようにしましょう。。
効果的なテント倉庫の活用法
最適な遮熱・冷却対策
- 高性能遮熱材の選択: 特殊な多層構造になった遮熱材を選ぶと、中の温度をグッと下げられます。

材料を選ぶときは、光をどれだけ反射するか(日射反射率)や熱をどれだけ放出するか(放射率)の値をチェックしておくことが大切です。
- 内幕(二重構造)の活用: テント素材は薄いので、一枚だけだと暑さを防ぎきれません。内側にもう一枚シートを張る「内幕」という方法を使うと、間の空気が断熱材の役割を果たして、さらに約3℃涼しくなります。
- 屋根スプリンクラーの設置: 屋根に時々水をかけるシステムを付けるのも、お金はあまりかからないのに効果的です。水が蒸発するときの気化熱で、中の温度が2~3℃下がることがわかっています。

効率的な換気システム
- ベンチレーターの設置: 屋根の一番高いところに自動で開け閉めできる換気装置(ベンチレーター)を付けると、中の熱い空気が自然と上に上がって外に逃げていきます。
- 風の通り道設計: 主風向に合わせて窓の位置を決定することで、効率的な自然換気が可能になります。厚生労働省のガイドラインでは、風速0.5m/s以上の気流確保が推奨されています。
- 大型送風機の活用: 大型のHVLSファン(High Volume, Low Speedファン)を導入すれば、体感温度が約4℃下がる効果があります。消費電力も一般的なエアコンの約1/10で済みます。
運用・管理方法
- WBGT(暑さ指数)管理: 温度と湿度を測るセンサーを置いて、暑さ指数(WBGT)に合わせて作業を管理するのがよいでしょう。この値が31度を超えると、軽い作業でも30分ごとに休憩が必要になります。
- 休憩サイクルの確立: 30分作業/10分休憩のサイクルを基本とし、WBGT値が上昇した場合は15分作業/15分休憩に切り替えるなどの対応が効果的です。
- 水分・塩分補給の徹底: 経口補水液や塩飴を常備した補給ステーションを設置し、20~30分ごとの水分補給を促します。個人別の摂取記録表も効果的です。
実践企業の成功事例
神奈川県のある建設会社では、大きな工事現場にテント倉庫を「熱中症ゼロステーション」として設置しました。
高性能な遮熱材と大型送風機を組み合わせた空間にすることで、作業員がきちんと休憩したり体調を管理したりできるようにしました。

「導入前は月平均4件あった熱中症疑い事例が、導入後はゼロになりました。欠勤率も8%から2%に減少し、工期の遅延リスクも大幅に低減できました」(現場責任者)
また、愛知県の自動車部品メーカーでは、夏季限定で組立ラインの一部をテント倉庫に移設。作業環境を35℃から28℃台に改善し、生産性が約17%向上しました。
「熱中症対策のために減らしていた夏場の作業時間を元に戻せたことで、投資回収期間はわずか1.5シーズンでした」(生産管理部長)
テント倉庫の投資対効果とテント倉庫を導入するとどれくらいお得なのか、100㎡の場合で計算してみました:
- 建設費:約600万円(プレハブより500万円節約)
- 電気代:年間約25万円削減
- 熱中症休業損失:年間約120万円削減
- 生産性向上効果:年間約200万円増
この試算によれば、熱中症による休業が1件発生すると、直接・間接コストを含めて平均約40万円の損失になることが分かります。テント倉庫は『経費』ではなく『投資』と考えるべきといえるでしょう。
テント倉庫の導入スケジュール
テント倉庫を導入する際スケジュールはこのような流れになっています。:
- 計画立案(2~3ヶ月前):設置場所・規模検討、予算確保
- 行政手続き(1~2ヶ月前):建築確認申請/仮設許可申請
- 設計・発注(1ヶ月前):仕様決定、メーカー選定
- 設置工事(2~3週間):基礎・本体設置
- 運用準備:安全確認、従業員教育
まとめ:法改正を見据えた今からの対策
気候変動の影響で熱中症のリスクは年々高まっています。そんな中、2025年から建築基準法が変わることも考えると、早いうちに対策を立てておくことが大切です。
テント倉庫はコストが安く、工事期間も短くて、効果も高いので、特に中小企業にとって現実的な選択肢となっています。
テント倉庫は法改正後も仮設建築物としての緩和措置は継続される見込みですが、安全基準は厳しくなります。早めに専門家に相談し、適切な設計・申請を行うことで、コスト効率の高い熱中症対策が実現できます。
人材を確保するのが難しい今の時代、働きやすい環境を作ることは企業の競争力を高めることにもつながりますよ。今年の夏に向けて、そして2025年の法改正も視野に入れて、熱中症対策としてのテント倉庫導入、ぜひ検討してみませんか?