テント倉庫は保険適用できる?火災・風害・雪害への補償と選び方ガイド
2025.10.20
2025.10.3

テント倉庫を運営されている企業様から、保険加入について判断に迷われていると聞くことが多くあります。
たしかにテント倉庫は建築物とは構造が異なるため、保険の適用範囲や必要な補償額について明確な情報が少なく、分かりづらいのが現状です。
保険会社からの説明も一般的な建築物を前提としたものが多く、テント倉庫特有のリスクに対する具体的な補償内容が分かりにくいという声も聞かれます。
実際、台風や積雪による倒壊リスク、火災や落雷などの災害は、テント倉庫にも大きな被害をもたらす可能性があります。これらのリスクに対して、適切な備えをすることは事業を安心して続けるためにも重要です。
本記事では、テント倉庫における保険の必要性と、一般的な補償範囲の考え方について、専門的な観点から整理してご説明いたします。保険加入を検討する際の判断材料として、お役立ていただければ幸いです。
目次
第1章:テント倉庫保険の加入率が低い3つの理由
テント倉庫の保険加入率が低い背景には、主に3つの理由があると考えられます。
1. 「仮設建物は保険対象外」という誤解

多くの企業様が、テント倉庫は仮設建物であるため保険の対象にならないと誤解されています。
しかし実際には、テント倉庫も建築物として火災保険の対象となることが一般的です。この誤解は、保険に関する情報不足から生じているケースが多く見受けられます。
2. 保険会社側の説明不足
保険会社の説明は、多くの場合「一般的な建築物」を前提としています。そのため、テント倉庫ならではの構造や使い方に合わせた補償内容が十分に伝えられていません。
このことから、企業様が自社のテント倉庫にどんな保険が適しているのか分かりにくいということがあります。
3. 過去の経験による判断
これまで大きな被害を受けたことがない企業様ほど、今後も必要ないと判断されるかもしれません。
しかし、近年の気候変動により、想定を超える規模の台風や豪雨、大雪などが発生するリスクは高まっています。過去の経験だけでリスクを判断することは適切とはいえない状況になっています。
これらの理由により、本来必要な保険への加入が見送られているケースが多いのが現状です。
第2章:保険未加入で起きた高額損失事例
テント倉庫における災害リスクは、決して軽視できるものではありません。保険未加入の場合に想定される被害について、一般的なケースをもとに検証します。
台風による被害の実態

近年の大型台風では、テント倉庫への被害が多く報告されています。
強風によってシートが破損するだけでなく、鉄骨フレームまで変形するケースもあります。被害の程度によっては、倉庫全体の建て替えが必要となることもあり、その場合は数百万円から一千万円を超える費用が発生する可能性があります。
さらに、倉庫内の商品や設備が風雨にさらされれば、その損害も加わることになります。
積雪による倒壊リスク

雪の重量は想像以上に大きく、積雪が1mを超えると、テント倉庫にかかる荷重は数十トンに達することもあります。構造上の耐荷重を超えた場合、倉庫全体が倒壊する危険性があります。
倒壊時には建物だけでなく、内部の機械設備や在庫商品もすべて損害を受けることになり、事業活動に深刻な影響を与えます。
保険加入の有無による差
これらの災害が発生した場合、保険に加入していれば、契約内容に応じて損害の補償を受けることができます。一方、未加入の場合はすべて自己負担となります。年間の保険料と比較すると、一度の災害で発生する損害額は、その数十倍から数百倍に達することも珍しくありません。
事業継続への影響
保険未加入での大規模な損害は、資金繰りの悪化や事業の一時停止につながる可能性があります。特に中小企業様にとっては、予期せぬ多額の出費が経営に与える影響は計り知れません。
このような観点から、テント倉庫においても適切な保険への加入は、リスク管理の重要な要素といえます。
第3章:テント倉庫保険の補償範囲と仕組み
テント倉庫に適用される保険は、一般的に火災保険の一種として取り扱われます。ここでは、基本的な補償範囲と仕組みについてご説明いたします。
補償される主な災害
・火災:失火やもらい火による損害
・風災:台風や強風によるシート破損、構造物の変形
・雪災:積雪による倒壊や破損
・水災:洪水や豪雨による浸水被害
・落雷:雷による直接的な損害や電気設備への影響
補償の対象となる範囲
保険の補償対象は、大きく分けて「建物」と「動産」の2つに分類されます。建物とはテント倉庫本体(シートや鉄骨フレーム)を指し、動産とは倉庫内に保管されている商品や設備などを指します。両方を補償対象とすることで、災害時の損害を総合的にカバーすることが可能となります。
注意すべき点
重要な注意点として、地震による損害は通常の火災保険では補償されません。
地震によるリスクに備えるためには、別途地震保険への加入を検討する必要があります。また、保険会社や契約内容によって、補償される災害の範囲や条件が異なる場合があるため、詳細な確認が必要です。
保険金額の設定について
保険金額は、建物の再調達価格(同等の建物を新たに建設する場合の費用)と、保管物の価値を基準に設定されることが一般的です。適切な保険金額の設定により、万一の際に十分な補償を受けることができます。
第4章:最適な保険選びと保険料目安
テント倉庫の保険を検討する際は、施設の規模に応じて適切な補償内容を選択することが重要です。ここでは、規模別に一般的な考え方をご紹介いたします。
小規模テント倉庫(100㎡未満)

個人事業主様や小規模企業様が利用される、6m×10m程度のテント倉庫がこれに該当します。主に工具や資材の保管など、比較的価値の低い物品を保管するケースが多く見られます。
このような小規模施設では、火災・風災・雪災といった基本的な補償を中心としたシンプルなプランで対応可能です。保管物の価値が限定的な場合は、建物のみを補償対象とすることも選択肢の一つとなります。保険料の一般的な水準としては、年間5万円から10万円程度が目安となることが多いようです。
中規模テント倉庫(100㎡〜500㎡)
10m×20mから15m×30m程度の規模で、製造業の部品保管や物流施設のサブ倉庫として活用されることが多いサイズです。保管物の価値も相応に高くなる傾向があります。
中規模施設では、基本的な補償に加えて、水災への備えが重要となります。近年の集中豪雨などを考慮すると、浸水リスクへの対策は欠かせません。また、在庫量が多い場合や夜間無人となる施設では、盗難への備えも検討事項となります。保険料は年間15万円から30万円程度が一般的な水準とされています。
大規模テント倉庫(500㎡以上)

20m×30mを超える大型施設で、物流拠点や大規模な資材置き場として使用されるケースが該当します。保管物の総額が数千万円に達することも珍しくありません。
大規模施設においては、火災・風災・雪災・水災に加え、盗難や設備故障といった幅広いリスクをカバーできる包括的な補償が不可欠です。
年間保険料は概ね40万円以上となりますが、企業向けの総合パッケージを活用すれば、補償範囲を広げながらも費用対効果の高い契約が可能となります。
適切な保険選びのポイント
規模に関わらず重要なのは、施設の立地条件や保管物の性質を考慮することです。河川の近くであれば水災への備えを手厚くする、高価な精密機器を保管する場合は動産補償を充実させるなど、個別の事情に応じた調整が必要となります。
また、複数の保険会社の提案を比較検討することで、より適切な補償内容と保険料のバランスを見つけることができるでしょう。
第5章:保険加入までの5ステップ
テント倉庫の保険を検討する際は、段階的に準備を進めることで、適切な判断が可能となります。以下に、一般的な検討プロセスをご紹介いたします。
ステップ1:現状確認(所要時間:5分)
まず、テント倉庫の基本情報を整理します。施設の寸法(幅・長さ・高さ)、建設年月、構造の特徴などを確認し、記録しておくことが重要です。
ステップ2:リスク評価(所要時間:30分)
立地条件から想定されるリスクを洗い出します。河川の近さ、積雪量の多い地域か、台風の通過頻度など、地域特性を考慮したリスク評価を行います。また、保管物の種類と概算価値も把握しておく必要があります。
ステップ3:補償内容の検討(所要時間:15分)
リスク評価に基づき、必要な補償範囲を検討します。基本補償(火災・風災・雪災)に加えて、水災や盗難など、追加すべき補償を整理します。
ステップ4:情報収集と比較(所要時間:1日)
複数の保険会社から情報を収集し、補償内容と費用のバランスを比較検討します。同じ条件で比較することで、各社の特徴が明確になります。
ステップ5:総合的な判断(所要時間:1時間)
収集した情報をもとに、自社のニーズに最も適した保険を選択します。補償内容の充実度、費用対効果、保険会社の信頼性などを総合的に評価することが重要です。
事前準備の重要性
これらのステップを通じて、テント倉庫の現状とリスクを正確に把握することができます。また、施設の写真(外観4方向、内部の様子)を撮影しておくと、保険会社への説明がスムーズになります。
適切な準備により、自社にとって最適な保険選択が可能となります。
まとめ:今すぐ始める保険検討の第一歩
テント倉庫における保険は、事業継続のための重要なリスク管理手段です。年間の保険料と比較して、災害時の損害額は数十倍から数百倍に達する可能性があることを考慮すると、適切な保険への加入は合理的な経営判断といえるでしょう。
まずは、お持ちのテント倉庫の基本情報を整理することから始めることをおすすめします。施設の規模、立地条件、保管物の内容などを明確にすることで、必要な補償範囲が見えてきます。
台風、大雪、火災などの災害リスクは、いつ発生するか予測できません。事業を守るための備えとして、テント倉庫の保険について検討されることは、企業様の安定的な事業運営に寄与するものと考えられます。
本記事が、テント倉庫の保険を検討する際の参考情報としてお役に立てれば幸いです。